波野千代子氏は、現代の歌舞伎界を代表する人間国宝・二代目中村吉右衛門の四女として生を受けた。母は波野知佐氏。祖父には八代目松本幸四郎(初代白鸚)を持ち、親族には九代目松本幸四郎(二代目白鸚)や十代目松本幸四郎、市川染五郎らが名を連ねる。日本芸能界の最高峰とも言える傑出した家系図のなかで、彼女は幼少期から格式と伝統を肌で感じながら育った。
播磨屋の大幹部である父の背中を見つめ、楽屋の匂いや挨拶を日常として育った経験は、現在の音羽屋の女将としての揺るぎない礎となっている。名門の娘でありながら出しゃばらず、常に控えめで品格ある佇まいは、幼少からの環境が育んだ賜物だ。