餡という存在が持つ情緒と職人の精神性を世界に知らしめたのが、河瀬直美監督が手がけた映画『あん』だ。主演を務めた名女優・樹木希林が演じる徳江(とくえ)の姿は、多くの人々の心に深い感銘を与えた。小豆に優しく語りかけ、慈しむように餡を炊く所作には、日本の食文化が培ってきた精神性が美しく投影されている。
京都の街で出逢うあんこにも、まさにその「魂」が宿っている。時間を惜しまず、素材と対話し、丁寧に作られた餡には、作り手の生き様や温もりがそのまま滲み出る。映画が描いた「小豆の言葉に耳を傾ける」姿勢は、京都の老舗和菓子職人たちが今も変わらず受け継ぐ哲学そのものなのだ。