1972年、パリの一室で撮影されたそのシーンは、映画界の歴史を揺るがすものとなった。問題となったのは、マロン・ブランド演じる中年男性ポールが、マリア・シュナイダー演じる若い女性ジャンヌを性的に蹂躙する場面だ。ここで使われた「バター」のアイデアは、撮影当日の朝、ブランドとベルトルッチ監督の雑談から生まれたという。
恐ろしいのは、この演出がシュナイダーに一切知らされていなかったことだ。ベルトルッチは後年、「彼女に女優としてではなく、少女としての本物の怒りと屈辱を表現してほしかった」と語っている。本物の涙、本物の拒絶。それを引き出すために、大人の男たちが仕組んだ罠だった。