松岡の思索において、もうひとつの太い幹を成していたのが鋭利な日本文化論だ。著書『日本文化私観』をはじめとする一連の著作で、彼は日本の伝統美学を「情報の編集様式」として鮮やかに再定義してみせた。
「見立て」「あわせ」「かさね」「うつろい」。茶道、連歌、庭園、着物の意匠などに宿る日本固有の作法を、松岡は洗練された情報処理のプロトコルとして捉え直した。西洋的な二項対立や要素還元主義とは異なり、あいまいで流動的な境界を巧みに編集する日本的思考。それは環境問題や複雑化する社会課題に直面する世界に対し、極めて示唆に富むオルタナティブな知恵を提供している。