タイパ(タイムパフォーマンス)を極限まで追求する社会構造が完成した2026年代半ば。あらゆるサービスがオンデマンド化され、会話すらアルゴリズムによって最適化される時代になった。だが、人々が最終的に辿り着いたのは、効率化が削ぎ落とした「無駄」への憧憬だ。
カウンターでグラスを傾けていた30代のIT企業勤務の男性はこう語る。「仕事も買い物もすべて画面の中で完結する。だからこそ、ここに来て誰が隣に座るかわからないスリルや、マスターとの他愛もない会話が何よりの贅沢に思えるんです」。偶然の相席から生まれる脱線だらけの会話。効率を排除したその時間こそが、ストレスフルな都市生活に対する最高の処方箋となっている。