敷地内に一歩足を踏み入れると、そこは日常のスピードとは異なる時が流れる別世界だ。かつてこの地にあった元首相・岸信介の邸宅(東山旧岸邸)に隣接し、歴史と自然が深く溶け合っている。
建物の設計を担当したのは、日本を代表する建築家・内藤廣氏。緩やかな曲線を描く木造の回廊は、庭園の樹木を傷つけないよう配慮して配置された。屋根の下に広がる半屋外のテラス席からは、四季折々に表情を変える池や竹林が一望できる。雨の日には庇を打つ雨音すらも、風情ある演出に変わる。自然を切り取るのではなく、自然の中に溶け込ませるという意匠が、訪れる者の感覚を研ぎ澄ませていく。