事件が動き出したのは、雨が薄っすらと路面を濡らす週末の深夜だった。京都府内の山間部に通じる県道脇で放置された乗用車が発見され、乗っていた人物との連絡が完全に途絶えた。車両に目立った損傷はなく、鍵は差し込まれたまま。車内にはスマートフォンなどの貴重品も残されており、事件と事故の両面から直ちに本格的な事件事故調査が開始された。
現場を捜索した警察官が真っ先に着目したのが、フロントガラス上部に設置されていた標準型のカメラだ。同行していた父親の証言によれば、車は普段から家族の送迎や日常の足として使われており、特段変わった様子はなかったという。「前日まで普通に会話をしていた。なぜこんなことに……」。疲弊した面持ちで語る遺族の言葉が、事態の異様さを物語っていた。