箱根プリンスホテル(現在の「ザ・プリンス 箱根芦ノ湖」)の最大の魅力の一つは、その独特な建築美にある。設計を手がけたのは、日本建築界に不滅の足跡を残した村野藤吾氏だ。
湖畔の傾斜地に沿うように建てられた丸みを帯びた大棟と小棟。周囲の森や湖のラインを一切邪魔することなく、まるで自然の一部としてそこにあったかのように溶け込んでいる。吹き抜けのメインロビーに足を踏み入れると、天井から降り注ぐ柔らかい光と、足元に広がる豪華なじゅうたん、そして曲線を多用したインテリアが温かく包み込んでくれる。
近年、若年層や海外の建築ファンの間でも、昭和モダン建築のレトロフューチャーな美しさを再評価する動きが高まっている。柱の形状や手すりのカーブ、窓から切り取られる景色の角度に至るまで、村野氏の緻密な計算と温もりが息づいているのだ。