1939年の創業以来、北九州市の台所として親しまれる旦過市場のすぐ傍らで、小倉昭和館は映画の灯をともし続けてきた。高度経済成長期の熱気から平成、令和へと移り変わる時代の中で、二本立て興行を中心とする名画座として独自の地位を築き上げた歴史は伊達ではない。数々の往年の名作や味わい深い邦画が映し出され、館内は常に人々の歓声と涙で満ちていた。
しかし、2026年に起きた旦過市場周辺の相次ぐ火災が、この平和な日常を一変させる。突如として襲いかかった大火は、貴重な映写機やポスター、そして長年積み重ねられた映画ファンの記憶の場を容赦なく奪い去った。焼け野原となった現場を前に、誰もが廃業を覚悟した。それでも、文化の灯火を消してはならないという地域の人々の情熱が、途絶えかけた歴史を再び未来へとつなぎ止めたのである。