父の享年である37歳を遥かに超え、今や名実ともに日本映画界・演劇界の重鎮となった中井貴一。シリアスなサスペンスから重厚な時代劇、さらには軽妙洒脱なコメディまで自在に演じ分けるその姿は、かつて父が目指し、志半ばで途切れた「役者としての可能性」を広げ続けているようにも見えます。
小津安二郎作品のデジタルリマスター上映や昭和映画の再評価が進む昨今、佐田啓二の残したフィルムは若い世代の映画ファンにも再発見されています。父が銀幕に刻みつけた圧倒的な品格と、息子が半世紀以上にわたって積み上げてきたリアリズムの演技。二世代にわたる表現者の歩みは、日本エンターテインメントの歴史そのものとして今なお眩い光を放っています。