コハダを語る上で避けて通れないのが、その幼魚である「シンコ」の存在だ。初夏から夏にかけてのごく短い期間だけ市場に出回るシンコは、一尾が数センチほどの超極小サイズ。一貫の握りに3枚、4枚、時には十数枚ものシンコを美しく並べて握る仕事は、まさに職人技の極致である。
キロあたり数万円という高値がつくこともあるシンコは、江戸前寿司の季節感を象徴する至高の逸品だ。初夏のシンコから始まり、秋に向かって成長し脂が乗っていくコハダへと変化する味わいを追いかけること。これこそが日本の四季を味わい尽くす通の楽しみ方であり、寿司文化の奥行きを示す象徴的なエピソードと言える。