学術分野としての土壌学(ペドロジー)において、古くからその豊かな生産性で知られる伝説的な土が存在する。それが、ユーラシア大陸や北米大陸の一部に広がる世界最肥沃の黒色土「チェルノーゼム」だ。
チェルノーゼムは、草原の有機物が数千年にわたって蓄積・分解されて形成された、圧倒的な厚みの腐植層を誇る。窒素やリンといった作物の生育に必要な養分を豊富に含み、保水力と通気性の双方を完璧なバランスで兼ね備えているのだ。ペドロジーの研究者たちは、この最高峰の土壌がどのように長期間その生命力を維持してきたのかを追究。人為的なアプローチによってチェルノーゼムのような卓越した保水・保肥能力を現代の疲弊した畑に再現する試みが、世界各地の実験現場で熱を帯びている。