『金色夜叉』の爆発的なヒットは、舞台となった静岡県熱海市を一躍全国屈指の観光名所へと押し上げました。熱海サンビーチ沿いには現在も、二人の悲劇的な別れを後世に伝えるランドマークが佇んでいます。
海岸線に立つ「お宮の松」は、作中で別れの舞台となった松にちなんで命名されたもので、現在の松は枯死などを経て植え替えられた二代目です。その隣には、彫刻家・舘野弘青が手がけた「貫一お宮の像」が設置されており、貫一がお宮を蹴り飛ばすあの緊迫した瞬間が見事にブロンズで再現されています。
名作が誕生してから1世紀以上の時が流れた現在でも、多くの観光客がこの像の前で足を止めます。劇的なポーズの背後にあるのは、単なる暴力や裏切りではなく、近代化の波に翻弄された男女の切ない魂の叫びであったことを、この記念碑は静かに語り続けています。