大通りから一本入った小さな露地(ろじ)にこそ、タイムスリップしたかのような風景が残されている。古い木造家屋の格子戸、路地に置かれた鉢植えの緑、そして朝の光が射し込む角度。これらはガイドブックには載っていない、一瞬の奇跡だ。
光の計算も変わった。直射日光が差し込む昼間よりも、マジックアワーや陰影の強い時間帯が好まれる。陰翳礼讃(いんえいらいさん)の美学が、令和のカメラファンの間で再評価されているのだ。薄暗い堂内のほのかな光や、苔むした庭園に落ちる木漏れ日。光を追うのではなく、影をいかに美しく残すかという視点が、作品の完成度を左右する。