岐阜県の流しそうめん文化が大きな転換点を迎えたのは、2026年8月のことでした。郡上市白鳥町の飲食店「阿弥陀ヶ滝荘」を利用した観光客から相次いで下痢や発熱などの症状が報告され、最終的な患者数は全国30都府県・計892名に達する前代未聞の集団食中毒へと発展しました。
岐阜県保健所および厚生労働省の調査により、原因物質は鶏肉などに多く見られる細菌「カンピロバクター」と特定されました。なぜ清流を売りにする観光地のそうめんでこれほどの大規模感染が起きてしまったのか、その決定的な要因は店舗が引き込んでいた水源の管理体制にありました。
当時、施設では塩素消毒や十分なろ過処理を行わないまま、山林の沢水(湧き水)を直接調理や流しそうめん用の水として使用していました。事故直前の記録的な豪雨によって山肌の土砂や野生動物(シカやイノシシなど)の糞便由来の菌が沢水に混入し、濁り水がそのまま配管を通って客の口に入ってしまったことが判明しています。
さらに調査の過程で、年1回義務付けられていた水質検査が事故発生前の約3年間にわたり怠られていたというずさんな衛生管理の実態も浮き彫りとなりました。大自然の「天然水」というイメージに潜むリスクを軽視した結果が、未曾有の事態を引き起こした根本的な原因でした。