オスマン帝国の面影を残すモスクのミナレットと、重厚なオーストリア・ハンガリー帝国の建築が隣り合うサラエボの旧市街バシュチャルシヤ。数歩歩くだけで景色も文化の空気も一変する圧倒的な多層性は、訪れる者を一瞬で呑み込む。カフェに腰を下ろせば、伝統的な銅製ジャグで淹れられた濃密なボスニアコーヒーが運ばれ、街角からは香ばしいチェヴァピの煙が立ち上る。
世界遺産の古橋で知られる南部モスタルも外せない。エメラルドグリーンに輝くネレトヴァ川に架かるアーチ橋「ストリ・モスト」周辺は、歴史の深みと洗練されたショップが同居する至高のエリアだ。西欧の有名都市を悩ませる過度なオーバーツーリズムとは無縁であり、上質な時間を静かに味わえる点も、日本の旅人にとって決定的な魅力となっている。