この名曲を語る上で欠かせないのが、20世紀フォックス(現20世紀スタジオ)の重役たちを前にして行われた伝説のワークショップ・セッションです。映画製作のグリーンライト(予算承認・製作決定)を獲得するための最終プレゼンテーションであり、ヒュー・ジャックマンにとっても7年半もの間温め続けてきた企画の命運を分ける極めて重要な日でした。
しかし、ワークショップの前日に事態は急変します。ヒュー・ジャックマンは鼻の皮膚がん(基底細胞がん)の切除手術を受けた直後であり、担当医から「絶対に歌ってはならない。声帯に圧力がかかれば縫合した約80針の傷口が破裂し、大出血を引き起こす危険がある」と厳命されていたのです。
当日、ジャックマンは歌唱を行わず、ブロードウェイの実力派俳優ジェレミー・ジョーダンがバーナムの歌唱パートを代役として担当することになっていました。前半の楽曲では椅子に座り、演技とセリフの朗読に専念していたジャックマンでしたが、ラストナンバーである『フロム・ナウ・オン』の演奏が始まると、奇跡が起こります。
アンサンブルキャストたちの熱気と、音楽が生み出す圧倒的なエネルギーに魂を揺さぶられたジャックマンは、医師の警告を完全に忘れ、自ら立ち上がってマイクを握りしめました。当時の様子について、ヒュー・ジャックマンは特番インタビューや自身のSNSで次のように振り返っています。
「ジェレミーが素晴らしい歌声を響かせていた。けれど曲が最高潮に達した瞬間、胸の奥から何かが突き上げてきて、気づいたら立ち上がって歌っていたんだ。傷口から血が滲み出ているのが分かったけれど、あの場にいた全員のエネルギーが一つになった瞬間、もう誰にも止められなかった」
スタジオにいた経営陣やプロデューサー陣は、ジャックマンの鬼気迫る熱唱とキャスト全員の魂のコーラスに圧倒され、スタンディングオベーションが巻き起こりました。このヒュー・ジャックマン ワークショップ 歌唱の記録映像がYouTubeなどで公開されると瞬く間に世界中でバイラルヒットを記録し、映画本編の公開前からファンの期待を最高潮へと押し上げる決定打となったのです。