『GANTZ』の作中で最も不気味なシチュエーションの一つが、仏教寺院の境内に「西洋のキューピッド(プット)を模した天使像」が飛翔している光景です。読者の多くが「なぜ仏像ミッションに天使がいるのか?」と疑問を抱きました。
作中の描写および設定資料の文脈から読み解くと、ガンツの標的となる「星人」たちは、地球上の特定地域に潜伏する際、その場にある物質や文化的意匠、建造物、石像などを取り込んで肉体を形成・擬態する生態を持っています。東郷寺をモデルとした舞台において、大仏や金剛力士像、千手観音像と同化する星人が大半を占める中、天使像は寺院内の墓石装飾や奉納物、あるいは西洋彫刻のレプリカを取り込んだ個体であったと考えられます。
この「和の中に紛れ込んだ西洋の異形」という構図は、読者に対して強烈な認知的不協和をもたらしました。神聖で無垢なはずの天使が無表情の石像のまま宙を舞い、人間を肉塊へと変えていくギャップこそが、仏像編の底知れぬ恐怖の原点です。