鹿児島陸上の躍進を支えるもう一つの重要な柱が、霧島市に本拠を置く京セラ女子陸上部メンバーの存在です。全日本実業団女子駅伝(クイーンズ駅伝)で常に上位争いを繰り広げるトップ実業団チームが県内に身を置いていることは、地元の女子中高生ランナーにとって極めて大きな心理的アドバンテージとなっています。
地元高校の指導者は、合同合宿の現場で次のように証言しています。
「高校生にとって、日本代表クラスの実業団選手がすぐ隣で淡々と厳しいメニューをこなす姿を日常的に見られる意味は計り知れません。『実業団選手も自分たちと同じ人間であり、正しい努力を積み上げればあのスピード域に手が届く』という感覚が自然に刷り込まれるのです」
年間の鹿児島陸上記録会日程を確認すると、高校生や大学生だけでなく、実業団選手や招待選手が同一の組で走るオープンレースが積極的に設定されています。この「世代とカテゴリーを超越したオープンな競技環境」こそが、鹿児島陸上強豪校躍進の理由の根幹にあります。
一方で、現場の課題がないわけではありません。年間を通じて過密化するレーススケジュールによる選手のオーバートレーニングのリスクや、指導者間の情報格差など、過渡期特有の歪みも一部で指摘されています。トップ層が伸びる一方で、中間層の選手たちが過度なタイム至上主義に追いつけなくなる「二極化現象」をどのように緩和するかが、今後の持続的な成長に向けた試練となっています。