現在では日本全国に知られるようになった河津桜だが、その原点はたった1本の野生の苗木から始まった。1955年の冬、地元の飯田勝美氏が河津川沿いの雑草の中で偶然にも小さな桜の苗木を発見し、自宅の庭先に大切に植え替えたのがすべての始まりである。この苗木はすくすくと育ち、約10年後の1966年1月に初めて鮮やかなピンク色の花を咲かせた。
学術的な調査を経て、カンヒザクラ系とオオシマザクラ系の自然交配種であることが判明し、1974年に「カワヅザクラ(河津桜)」と正式に命名された。飯田勝美氏の手によって奇跡的に保護された原木は、今なお河津町内の飯田邸の庭先で力強く枝を広げ、毎年見事な花を咲かせ続けている。1本の苗木から始まったこの奇跡の物語は、今や町全体を包み込むピンクの大地へと結実したのだ。