世界的な意識の転換点は、かつてドキュメンタリー映画『プラスチックの海(A Plastic Ocean)』が暴き出した海洋生物の悲劇だった。だが今や、カメラのレンズは海洋生物の胃袋から、人間の血液サンプルへと向けられている。
国際機関や各国政府も対応に追われている。世界保健機関(WHO)は飲料水中のマイクロプラスチックに関する知見を継続的にアップデートし、より厳密な毒性評価とサンプリング手法の標準化を急いでいる。これまで「即時的な健康被害は確認されていない」と慎重姿勢を崩さなかった公的機関も、ナノレベルの生体透過性が実証されたことで、リスク評価の再構築を余儀なくされた。
日本国内でも環境省を中心に、水環境および体内摂取経路における曝露実態調査が進められている。国際社会が法的拘束力を持つプラスチック汚染防止条約の策定に向けて舵を切るなか、水道水や市販飲料の検査ガイドラインをどこまで引き上げるか、政策決定者には重い判断が突きつけられている。