神奈川県選手権が持つ最大の戦略的価値は、8月下旬に開催される関東陸上競技選手権予選の最終選考会である点に尽きます。各種目において、原則として上位6名(競技種目や辞退枠の状況により最大8名程度まで繰り上げ)にのみ与えられる関東への切符。この狭き門を巡る戦いは、時に日本選手権以上に泥臭く、緊迫したドラマを生み出します。
現場を取材したトラックサイドの記録員や競技役員によると、初夏のトラックには独特の重圧が漂っています。ある大学有力校のスプリンターは、過去の特番インタビューで「全日本インカレの標準を切ること以上に、神奈川の県選で6位以内に残るほうが精神的に削られる」と吐露していました。その言葉の通り、予選落ちした選手が悔し涙を流しながらベンチを殴りつける光景や、0.01秒差で関東出場権を逃した高校生が頭を抱えて立ち尽くす場面は、毎年のように繰り返されています。
ソーシャルメディアや陸上専門掲示板における注目選手とネットの反応を追跡しても、「神奈川県選手権の決勝メンバーが日本選手権の準決勝とほぼ同じ顔ぶれで驚愕した」「インターハイ路線で関東を逃した高校生が、一般規格の県選で大学勢に下克上を果たす瞬間が最も胸を打つ」といったリアルな声が多数投稿されています。実業団のエリートが意地を見せるのか、学生陸上界の新星が突き破るのか。その境界線上で火花を散らす戦いこそが、本大会の神髄です。