市田柿を手にしたとき、誰もがまず目を奪われるのが、粉雪をまとったかのように均一に広がるきめ細かな白い粉です。食品の知識がないと「古くなってカビが生えているのでは」と不安に感じる人も少なくありませんが、この粉こそが熟練の乾燥・揉み込み技術によって引き出された市田柿の美味しさの証です。
この白い粉の正体は、専門用語で「柿霜(しそう、または柿花・かきばな)」と呼ばれる糖分の微細な結晶です。渋柿に含まれるタンニンが不溶化して渋みが抜けた後、適度な湿度管理と手揉み作業によって果実内部のブドウ糖や果糖が表面に滲み出し、外気で乾燥して結晶化します。漢方においては喉の渇きを潤し咳を鎮める生薬としても重宝されてきた歴史を持ちます。
では、万が一の「本物のカビ」とはどう見分ければよいのでしょうか。現場の選果基準と食品衛生の観点から、明確な判別ポイントを整理しました。
【柿霜(正常な白い粉)の特徴】
・全体に薄く均一に広がっており、サラサラとした微粒子状。
・舐めると砂糖のように上品で強い甘みがある。
・指で軽く触れても立体的な毛羽立ちはない。
【カビ(腐敗・変質)の特徴】
・白だけでなく、青・緑・黒・赤などの色が斑点状や局所的に発生している。
・触れるとフワフワとした綿毛状、あるいは糸を引くような立体的な盛り上がりがある。
・酸っぱい匂い、アルコール臭、カビ臭い異臭が漂う。
・果肉が異常に柔らかく崩れ、ドロドロに溶けている。
表面に黒い斑点が見られることがありますが、これは柿に含まれるポリフェノールの一種であるタンニン(渋み成分)が固まった「ゴマ」と呼ばれる無害なものです。色と形状、そして匂いを確認すれば、安全な柿霜か劣化によるカビかは明確に判断できます。