名優の足跡を振り返ると、その若い頃の経歴も極めて異色でした。早稲田大学法学部を中退後、渡瀬さんは当初芸能界を目指していたわけではなく、電通PRセンターに勤務するサラリーマン生活を送っていました。
しかし、東映のプロデューサーから熱烈なスカウトを受け、1970年に映画『殺し屋人別帳』の主演として鮮烈なスクリーンデビューを飾ります。デビュー後は、東映のアクション路線やヤクザ映画の現場で身体を張った過激なアクションを連発。『狂った野獣』ではスタントなしで大型バスのハンドルを握り、横転シーンを自ら演じるなど、映画史に残る命がけの撮影をこなしました。
深作欣二監督の『仁義なき戦い 頂上作戦』や、日本アカデミー賞助演男優賞を受賞した『事件』『震える舌』など、狂気とペーソスを兼ね備えた演技力は若手時代から高く評価され、名実ともに日本映画界のトップスターへと上り詰めていったのです。