事件発生直後から警察がもっとも注視していたのが、男児の父親が所有する車両の前後に設置された記録装置の内部データだ。家族の行動記録と照らし合わせた際、どうしても説明のつかない「約20分間の空白」が存在していたからである。
捜査関係者の証言によると、押収されたメモリーカードには、男児が姿を消す直前までの車内外の様子、さらには車両の細かな加減速や停車位置の記録が残されていた。当初は「死角に入り何も映っていないのではないか」とみられていたが、明度補正と音声のノイズキャンセリング処理を施した結果、周囲の環境音とともに微かな物音や人影の移動が確認されたという。
この映像データの解析によって、これまで父親側の説明にあった立ち寄り先と実際の走行ルートとの間に、わずかなズレが存在していたことが判明した。悪意による偽装なのか、それともパニック状態に起因する記憶の混濁なのか。確実なのは、このドラレコ映像が膠着していた捜査の風向きを決定づけたという事実だ。