1997年、映画史の頂点に君臨するメガヒット作『タイタニック』が公開される。ディカプリオが演じた画家志望の青年ジャック・ドーソンは、階級社会の束縛を軽やかに笑い飛ばし、運命の愛に命を捧げる。世界興行収入記録を塗り替えたこのロマンス映画は、日本を含む世界各地で「レオマニア」と呼ばれる社会現象を巻き起こした。
だが、この世紀のキャスティングの裏にはスリリングな舞台裏が存在した。監督のジェームズ・キャメロンが後年明かしたところによれば、スタジオでのオーディション当日、普段は静かなオフィスになぜか女性スタッフ全員が集結していたという。「彼が部屋に入ってきた瞬間、その場にいた全員の呼吸が止まったようだった」とキャメロンは回想している。当初、本読みを渋っていたディカプリオに対し、キャメロンが「読まないなら役はやらない」と突き放すと、彼は瞬時にスイッチを切り替え、完璧なジャックを演じて見せた。一瞬で空気を支配するその天性のスター性が、巨匠の心を即座に射止めたのだ。
現場では極寒の巨大水槽セットでの過酷な撮影が続いたが、相手役を務めたケイト・ウィンスレットとの間には生涯にわたる深い信頼関係が芽生えた。震える水の中で互いを鼓舞し合いながら紡ぎ出されたリアリティこそが、四半世紀以上を経た現在も観る者の胸を締め付ける名シーンの数々を生み出した。