住環境の歴史において、人が亡くなった経緯が契約判断に影響を与える物件は心理的瑕疵物件と呼ばれる。だが、何をもって「告知すべき事故」とするのかの境界線は、長年にわたり曖昧なまま放置されてきた。
混乱する現場に一定の秩序をもたらすべく策定されたのが、国土交通省 告知義務ガイドラインだ。病死や老衰といった自然死については原則として告知義務の対象外とし、自殺や他殺、火災による死亡事案については、発生から概ね3年間の告知を義務付けるといった明確な指針が示された。しかし、行政の定めたルールと一般消費者の心理的抵抗感との間には、依然として埋めがたい溝が横たわっている。
法的な告知義務期間である3年が経過したからといって、一度ネット上に刻印された事件の記憶が消えるわけではない。行政のガイドラインがどれほど整備されようとも、デジタルタトゥーとして残り続ける炎アイコンの存在が、不動産業界の実務に強烈なプレッシャーを与え続けている。