運ばれてきたヒノキの升を前にすると、まずその潔い佇まいに目を奪われる。表面を覆い尽くす鮮烈なグリーン。スプーンを静かに沈めると、抵抗感ゼロでとろりとなだれ込む。これが看板メニューである宇治抹茶ティラミスだ。
一口含んだ瞬間に広がるのは、一切の雑味がない上品な苦みと、芳醇なマスカルポーネチーズのクリーミーなコク。甘さは驚くほど控えめで、抹茶本来の輪郭がくっきりと際立つ。底に忍ばされたスポンジに染み込んだ茶蜜がアクセントとなり、後味は驚くほど軽やかだ。重厚な見た目とは裏腹に、気づけば最後の一すくいまで夢中で平らげてしまう。
この完成度の高さを支えているのが、天保7年(1836年)創業の老舗・森半(共栄製茶株式会社)の茶葉である。日本茶鑑定の名匠として名高い森田治秀氏が厳選した宇治抹茶を使用しており、熱や湿気に繊細な抹茶の香りを損なうことなく抽出し、スイーツとしての理想的な黄金比を追求している。見た目のインパクトに甘んじない、本物の素材力がそこにはある。