一見すると、一面に敷き詰められた厚焼き玉子だけが視界を埋め尽くす。だが、箸を差し入れた瞬間、その静寂は歓喜へと変わる。玉子の下から次々と顔を出すのは、特製ダレで煮込まれた鰻、〆小鯛、蒸し海老、そして一夜干しのイカ。株式会社新発田三新軒が手がける「えび千両ちらし」は、いまや全国の駅弁大会でも主役を張る伝説の逸品だ。
フォトジャーナリストの櫻井寛氏をはじめ、数多の鉄道紀行家が舌を巻いたこの仕掛け。甘めの玉子焼きと、酸味の利いた酢飯、そして重層的な海鮮の旨味が口の中で見事な調和を奏でる。見た目の素朴さと、隠された豪華さのギャップ。それは雪国の人々が内に秘める、もてなしの美学そのものかもしれない。