初めて訪れるなら、迷わず「おまかせ握りコース」を頼みたい。先付けから始まり、旬の刺身、焼き物、そしてクライマックスの握りへと続く流れは、まるで一編の物語を読んでいるかのような完成度を誇る。その日の最上のネタが、最適な温度に調整された赤酢のシャリとともに供される瞬間は圧巻だ。
さらに取材を進めると、長年通い詰める常連客だけが口にできる特別な裏メニューの存在が浮かび上がった。仕入れ状況と店主のインスピレーションが重なった日にだけ振る舞われる「蒸し鮑の肝ソース和え」や、極限まで煮詰めたツメで味わう「炙り穴子の塩スダチ仕立て」など、お品書きには載らない逸品が存在する。店主との会話を重ね、信頼関係を築いた先に待つこの贅沢こそ、通が足繁く通う理由である。