気象予報士や大気科学の専門家が指摘する最大の要因は、上空数千メートルに広がる大気の二重構造と、山脈を越えて吹き下ろす気流の熱力学的メカニズムにあります。
第1に、下層の太平洋高気圧の上に、上層のチベット高気圧が布団のように覆いかぶさる「ダブル高気圧(ヒートドーム現象)」が列島全体を蓋のように密閉しています。これにより下降気流が発生し、空気が圧縮されて温度が上がる「断熱圧縮」が列島規模で進行しました。
第2に決定的な役割を果たしたのが、フェーン現象理由として知られる山越え気流の熱力学変化です。南西から湿った空気が山脈にぶつかって上昇する際、水分を雨として放出しながら「湿潤断熱減率(約0.5℃/100m低下)」で冷やされます。しかし、山頂を越えて内陸側の平野へ吹き下ろす乾いた空気は、「乾燥断熱減率(約1.0℃/100m上昇)」という倍近いペースで急激に加熱されます。
この結果、山を越えた風が群馬や埼玉、山梨などの盆地・平野部へと到達した瞬間、ドライヤーの熱風のような灼熱気流へと変貌するのです。さらに大都市圏では、自動車やビル空調から排出される人工排熱とアスファルトの蓄熱が加わり、気温低下を徹底的に阻害する複合的な熱波地獄が生み出されています。