九段下の食文化を語る上で、江戸時代から続く歴史の重みを無視することはできない。文政年間(1861年創業)の歴史を誇る「寿司政」の暖簾をくぐれば、ピンと張り詰めた心地よい緊張感と、職人の鮮やかな手さばきが迎えてくれる。丁寧な仕事が施された煮切り醤油のヅケやふっくらと炊き上げられた穴子は、ファストフード全盛の現代においてなお、本物の日本料理が持つ凄みを雄弁に物語る。
近隣の割烹や和食店でも、旬の魚を使った焼き魚御膳や、出汁の効いた煮物定食が手頃な価格帯で提供されている。舌の肥えたビジネスパーソンたちを何十年も満足させ続けてきた確かな技術が、千代田区のこの一画には今も息づいている。