西岩部屋の指導方針で最も世間の耳目を集めたのが、所属力士に対する私的なSNS利用やスマートフォン利用の厳格な制限ルールです。情報化が進む現代において一見厳格すぎるようにも映るこの方針ですが、その背景には西岩親方の極めて合理的かつ温かい教育哲学が存在します。
親方がSNS利用を制限する主な理由は、以下の3点に集約されます。
第一に、誹謗中傷やネットトラブルから若い弟子を保護することです。入門したばかりの力士は10代半ばから後半の多感な少年たちが大半を占めます。ネット空間の無責任な声や誘惑に晒されるリスクを遮断し、純粋な心で相撲道に打ち込める環境を大人が整えるべきだという強い信念があります。
第二に、力士同士の対面コミュニケーションの深化です。各々が部屋の隅で画面を見つめる生活ではなく、同じ釜の飯を食い、顔を合わせて会話を交わすことで、本物の絆と協調性を育む狙いがあります。
第三に、相撲に対する集中力の維持です。稽古後の貴重な回復時間を無為な夜更かしで浪費させず、十分な睡眠と食事管理によって強い肉体を作り上げる狙いがあります。親方自身が現役時代に度重なる大怪我を乗り越えて関脇の座を長く守った経験から、「土俵にすべてを捧げる集中力の大切さ」を身をもって伝えているのです。