結論から明かすと、「ザクロの味が人肉に似ている」という説に医学的・歴史的な根拠は一切ありません。味覚の観点から見ても、強い酸味と甘みを持つ果実のザクロと、塩分や鉄分、アミノ酸を含む動物性の肉では成分構造が根本から異なります。
では、なぜこれほどおどろおどろしい都市伝説が定着してしまったのでしょうか。その背景には、視覚的なイメージのすり替えと、人々の好奇心を刺激する怪談カルチャーの影響があります。
ザクロの実は熟すと表皮が裂け、中から血のように赤い無数の小粒が顔を覗かせます。この生々しいビジュアルが、後述する「他人の子どもを奪って食べていた」という鬼子母神の初期伝承と結びつき、「血」「肉」「子喰い」の連想を生み出しました。昭和中期以降の怪談本やサブカルチャー作品が、教訓めいた仏話にショッキングな脚色を加えた結果、事実無根の噂が広く浸透していったのです。