日本の固有種であるアカハライモリ(Cynops pyrrhogaster)は、体長8〜14cmほどに成長する水陸両生の有尾類です。本州、四国、九州の水田、ため池、小川などの緩やかな水辺に生息しています。この小さな生き物には、驚くべき2つの生物学的特異性が備わっています。
赤いお腹の警告色と「テトロドトキシン」の真実
アカハライモリの鮮やかな赤色は、捕食者である鳥類や大型魚類に対して「自分を食べると危険だ」と警告するアポセマティズム(警告色)です。イモリの皮膚からは、フグと同じ強力な神経毒であるテトロドトキシンが分泌されています。
「イモリに触ったら命に関わるのか?」と不安視されることがありますが、イモリの毒は皮膚分泌物に含まれる微量なものです。触っただけで皮膚から毒が浸透することはありません。ただし、イモリを触った手で目をこすったり、傷口に触れたり、手を洗わずに食事をしたりすると、激しい痛みや粘膜の炎症、嘔吐を引き起こす危険があります。観察や捕獲を行った後は、必ず石鹸で念入りに手を洗うことが鉄則です。
手足や眼球まで復元する「驚異的な再生能力」
イモリは生物界トップクラスの再生力を持つことでも知られています。トカゲの尻尾切りは有名ですが、トカゲが再生した尾には骨(脊椎骨)が戻らず軟骨の管になるだけです。対照的に、イモリは四肢の骨や筋肉、神経、血管はもちろん、尾、顎、さらには心臓の一部や眼のレンズ(水晶体)まで完全に元の状態へ再生させることができます。
細胞が一度未分化な状態に戻ってから再び必要な組織へと作り変えられる「脱分化」のメカニズムは、最先端の再生医療分野でも非常に高い注目を集めています。