てこの原理の物理的本質を語る上で欠かせないのが、紀元前3世紀の古代ギリシャの数学者・物理学者であるアルキメデスの存在です。彼はシラクサの王ヒエロン2世に対し、次のような有名な言葉を残したと伝えられています。
「私に立てる場所(支点)を与えてくれれば、地球をも動かしてみせよう」
一見すると荒唐無稽な豪語に聞こえますが、幾何学と力学の計算上、この発言は完全に正しい事実に基づいています。支点から力点までの距離を無限に長く取ることができれば、人間1人のわずか数十キログラムの力であっても、約6×10の24乗キログラムという地球の質量を持ち上げるだけのモーメントを発生させることが可能です。
科学史の記録によれば、アルキメデスはこの原理を応用した滑車や複合てこ兵器を開発し、シラクサを包囲したローマ軍のガレー船を岸から丸ごと吊り上げて転覆させ、当時の軍事指導者たちを震撼させました。直感に頼る労働から、数学に基づいた「道具の設計」へと人類が脱皮した瞬間でした。