髭のケアや発毛サイクルに関しては、科学的根拠を欠いた俗説が長らく信じられてきました。代表的な誤解を解き、正しい生理学的理解を深めることが不可欠です。
ネット上で頻繁に囁かれる最大の俗説が「髭は剃れば剃るほど濃くなる」という言説です。しかし、医学的に剃毛によって毛母細胞の数が増えたり、遺伝的毛質が変化して太くなったりすることは一切ありません。毛は先端に向かって円錐状に細くなっているため、途中で水平に切断されると断面積の広い毛根近くが露出します。この断面が肌表面から覗くことで、視覚的に「太く濃くなった」と錯覚しているに過ぎません。
また、髭が伸びやすい季節に関する認識も重要です。毛髪や髭の成長は年間を通して一定ではなく、7月から8月の夏季に成長スピードが加速します。夏場は気温の上昇に伴って体全体の血流が良くなり、毛母細胞へ栄養を届ける新陳代謝と毛周期(成長初期・成長期・退行期・休止期)の回転が活発化するためです。逆に冬場は血行低下により成長速度自体は落ちるものの、空気の乾燥によって肌の水分が奪われ、肌がしぼむことで毛が外へ突出しやすくなり、青髭が目立つという別要因が絡んできます。