インバウンド観光客の急増を受け、国土地理院が2016年に策定したのが「外国人向け地図記号」です。訪日外国人アンケートや大使館関係者、専門家へのヒアリングを重ねて作られたこの新記号は、日本の伝統的な地図記号を全否定するのではなく、「多言語マップや観光案内板において外国人に確実に伝わること」を最優先にデザインされました。
変更にあたって激しい議論を呼んだのが寺院の扱いです。当初は伝統文化を守るべきという意見もありましたが、実用性と安心感を重視し、外国人向けマップでは「三重塔」のシルエットを採用する決断が下されました。神社については、海外でも認知度が高い「鳥居」のデザインがそのまま外国人向け記号としても正式採用されています。
また、治安の象徴である交番・警察署の記号も大刷新されました。日本の2本交差した警棒(○に×のような形状)は外国人から「立ち入り禁止」や「危険エリア」と誤認されるリスクがあったため、外国人向けには「制帽をかぶって敬礼する警察官」の直感的なピクトグラムに変更されています。文化の違いによる致命的なすれ違いを防ぐため、国土地理院は徹底的な現地目線でのわかりやすさを追求しました。