一歩足を踏み入れると、木漏れ日が柔らかく床を照らしている。聞こえるのは、風が葉を揺らす音と、静かな猫のゴロゴロ音だけだ。ここでは「猫と遊ぶ」ことすら推奨されない。人が猫を追いかけるのではなく、猫が寄り添ってくるのをひたすら待つ。効率と生産性が何より尊ばれる現代社会において、この徹底した「受動性」こそが最大のセラピーになっている。
利用者のひとり、都内のIT企業で働く30代男性はこう明かす。「最初は手持ち無沙汰で落ち着かなかった。スマホがないだけで不安になったんです。でも、膝の上に乗ってきた猫の温かさを感じているうちに、頭の中の雑音がすーっと消えていくのがわかりました」。この体験は、SNS時代の情報過多に疲弊した若年層を中心に瞬く間に口コミで広がった。