日本を含む西側諸国から見て「中国公安が怖い」と語られる最大の要因は、法執行機関が保有する行政権限限の異常な広範さにあります。民主主義国家における警察は、身柄拘束や家宅捜索にあたって原則として司法(独立した裁判所)による令状審査を必要とします。しかし、中国の法体系下では治安管理処罰法が存在し、公安機関自身が裁判を経ることなく被疑者に直接ペナルティを科すことが認められています。
具体的には、軽微な治安妨害行為や違法デモ、当局の命令に従わない行為に対し、公安局は独自の判断で最長15日(複数違反の併科で最大20日)の行政拘留や過料処分を下すことができます。身柄を拘束されてから裁判で争う余地はなく、公安の決定が直ちに執行される仕組みです。重大犯罪に至る前の「教育的拘束」という名目でありながら、実質的な懲役刑に近い自由剥奪が公安単体の裁量で行われる点に、国際社会が感じる畏怖の本質があります。
さらに中国公安の最新動向として注目されるのが、高度なテクノロジーと法制面の連動です。中国全土には数億台規模の監視カメラが稼働し、顔認証技術とAI解析を結びつけた監視システム(通称「天網工程」「雪亮工程」)が派出所の端末と直結しています。街中を歩行している個人の身元が瞬時にデータベースと照合され、要注意人物の動線は分単位でトラッキングされます。
加えて、2026年に改正された反スパイ法や2026年以降に運用が厳格化された各種行政規定により、国家安全や治安維持を理由とした公安・国安職員の現場権限は大幅に強化されました。法執行官が疑惑を持った場合、令状を待たずに現場でスマートフォンやパソコンなどのデジタルデータを検査できる規定が明文化されており、一般市民や外国人に対する心理的威圧感は年々高まっています。