ほっぺ ちゃん シールが、再び日本中のコレクターや大人の元ファンシー女子たちの熱い視線を集めている。手帳の片隅や交換ノートに夢中で貼りまくった、あのぷにぷにとした立体的な質感とつぶらな瞳。山梨の片隅から発信され、かつて社会現象を巻き起こした小さな妖精が、今まさに目を見張る進化を遂げてカルチャーの最前線へ舞い戻ってきた。
実家の引き出しの奥、色あせたシール帳を開けば当時の甘酸っぱい記憶が一気にフラッシュバックする。いま二次流通市場を含めて異常な盛り上がりを見せているほっぺ ちゃん シールの熱狂は、単なるノスタルジーの枠に収まらない。当時の少女たちが経済力を持つ大人となり、磨き抜かれた現代のデザイン技術と融合したことで、熱を帯びたコレクターズアイテムへと変貌を遂げているのだ。
サン宝石が放った奇跡のキャラクター!渡会知彦が生んだ社会現象の原点
すべては、山梨県に本社を置く株式会社サン宝石の工房で始まった。安価で愛らしいアクセサリーを全国の小中学生に届けていた同社において、デザイナーの渡会知彦氏が偶然絞り出したホイップクリーム状のシリコンパテ。頭にちょこんと乗ったリボンと黒いつぶらな瞳、そして愛らしいピンクのほっぺ。2010年に産声をあげた「ほっぺちゃん」の誕生である。
当時、新聞の折り込みチラシや少女向け雑誌の通販カタログに掲載されるやいなや、注文は爆発的に殺到した。1個数百円という小学生のお小遣いで買える圧倒的な親しみやすさ。そして何より、手作業でひとつずつ絞り出されるため、表情やフォルムが微妙に異なる「世界にひとつだけの存在」という特別感が少女たちの心を鷲づかみにした。
女子小学生向けファンシー雑貨の市場において、サン宝石の存在感は唯一無二だった。原宿の竹下通りにオープンした直営店には連日長蛇の列ができ、原宿カルチャーを象徴するアイコンへと駆け上がっていったのだ。
ちゃお・ぷっちぐみ読者を熱狂させた黄金期とニンテンドー3DSの躍進
ブームの拡大を加速させたのが、メディアミックスの波だった。株式会社小学館が発行する少女まんが誌『ちゃお』や低学年向け雑誌『ぷっちぐみ』誌面で大々的な特集が組まれ、オリジナルデザインのシールが付録として付くたびに完売店が相次いだ。読者たちは付録のシールシートを大事に切り取り、宝物のようにシール帳にコレクションしていった。
熱狂は紙媒体にとどまらない。日本コロムビア株式会社からリリースされたニンテンドー3DS向けゲームソフトシリーズは、自分だけのオリジナルほっぺちゃんを作り出して街を発展させるゲーム性が受けてスマッシュヒットを記録。デジタルとアナログの両軸で、子どもたちの日常を完全にジャックした。
学校に行けば誰かが新しいデザインのシールを持っていて、放課後にはシールの交換会が始まる。友情を深めるコミュニケーションツールとして、この小さなキャラクターは平成後期の女児文化の中心に君臨していた。