欧米の映画を見ていると、帰宅した住人がドアを内側に押し開けて室内に入るシーンをよく目にする。一方、日本の住宅街を歩けば、ほぼ100%の戸建て住宅で玄関ドアが外側に向かって開く。この決定的な差異は、土足文化と脱帽・脱靴文化の違いだけに起因するものではない。
欧米における内開きの本質は「防犯と防衛」だ。不審者が無理やり押し入ろうとした際、家主は内側から全体重をかけて扉を閉めることができる。さらに、外側に蝶番(ヒンジ)が露出しないため、工具でヒンジを破壊されて侵入されるリスクを低減できる構造になっている。
対して日本には、古くから玄関で靴を脱ぐ習慣がある。もし日本の狭小な玄関で内開きを採用すれば、脱ぎ散らかした靴をドアが引きずり、たたきのスペースは一瞬で死角と化す。さらに、台風や豪雨が多い気候特性も関係している。日本サッシ協会などの技術知見によれば、強風を伴う風雨に対しては、外側から吹き付ける風圧を枠全体で受け止める外開き構造のほうが、高い水密性と気密性を確保しやすい。JIS A 4702(ドアセット)の耐風圧性・気密性基準に照らしても、日本の気候風土には外開きが極めて合理的なのだ。