かつて「谷底の迷宮」と揶揄された渋谷の地形は、現在進行形の都市刷新によって劇的な進化の渦中にある。東急株式会社をはじめとする複数の事業主体が主導する渋谷駅街区再開発事業は、バラバラだった各路線の接続を空中デッキや地下ネットワークで強引なまでに再編してきた。だが、その恩恵の陰で、井の頭線ユーザーが直面する歩行ルートの景色もめまぐるしく変化を強いられている。
鉄道・都市交通産業全体を見渡しても、これほど高低差と過密ダイヤが交錯する拠点は極めて稀だ。井の頭線のホームはマークシティ2階に位置し、地下深くに潜る東急東横線・田園都市線や東京メトロ副都心線・半蔵門線とは垂直方向で数十メートルもの高低差がある。階段やエスカレーターの配置ひとつで人の滞留が発生するため、現場では日々、動線の最適化が試行錯誤されている。