魚偏に「喜」と書く漢字「鱚」の読み方は、訓読みで「きす」です。音読みでは「キ」と読まれることもありますが、日常の商業流通や飲食店のお品書き、魚市場の伝票では、ほぼ例外なく「きす」と呼称されます。
漢字の成り立ちを東洋言語学や文字学の観点から調査すると、興味深い事実が浮かび上がります。中国最古の漢字字典『説文解字』や歴代の中国典籍に「鱚」の字は見当たらず、日本国内で独自に考案された「国字(和製漢字)」であるという説が極めて有力です。日本人は古来、四季折々に水揚げされる魚介の姿や性質、味わいを捉え、独自の魚偏漢字を生み出してきました。鰯(いわし=弱くてすぐ死ぬ魚)や鱈(たら=雪の季節に獲れる魚)と同様に、「鱚」も日本の豊かな食文化の中から誕生した文字文化の結晶といえます。
難読漢字クイズの定番として取り上げられる機会も多く、魚偏の漢字クイズでは正答率が50%前後に留まるという調査結果もあります。魚自体の知名度は全国区でありながら、漢字表記を正確に把握している層は決して多くありません。