都内の透析クリニックで長年働くベテラン看護師は、静まり返ったフロアで以前起きたヒヤリハットを述懐する。回路チューブが患者の服の袖に引っかかり、わずかな力で皮膚から外れてしまったのだ。透析機器のポンプは血液を送り出し続けるため、発見が数分遅れれば致命的な失血を招く。まさに時間との戦いである。
このような事故は決して珍しい話ではない。厚生労働省や各種医療安全組織の調査でも、透析や持続点滴における針の抜け落ちや処置ミスは、年間数百件単位で報告されてきた。患者側の体動やせん妄状態、あるいはテープの粘着力低下など要因は複雑に絡み合う。