定期昇給とは?ベアとの違い・平均相場や上がらない職場の真相

定期昇給とは?ベアとの違い・平均相場や上がらない職場の真相

物価高への防衛策として賃上げへの社会的関心がかつてなく高まる2026年。毎月の給与明細を開きながら、「なぜ自分の基本給は思うように増えないのか」「ニュースで聞くベースアップと定期昇給は何が違うのか」と疑問を抱くビジネスパーソンが増加しています。終身雇用と年功序列を前提としてきた日本型雇用が激変する今、毎年の昇給を当然のものと捉えていると、知らぬ間に生涯年収で大きな格差をつけられるリスクに直面します。

給与体系の根幹をなす「定期昇給」ですが、実は「毎年必ず全員の給料が上がる制度」ではありません。就業規則に潜む条件設定や企業の業績、さらには制度そのものの見直しによって、昇給が見送られるケースが現場で相次いでいます。損をしないキャリア形成のために、制度の本質、相場、そして給料が上がらない構造的な背景を徹底検証します。

📌 【この記事の重要ポイントまとめ】
  • 要点1:定期昇給は「年齢や勤続年数・社内評価に応じて個人の賃金がステップアップする仕組み」であり、賃金水準全体を底上げするベースアップ(ベア)とは性質が根本的に異なる。
  • 要点2:2026年春闘でも高水準の賃上げが叫ばれる一方、定期昇給の平均相場は約1.8〜2.0%程度にとどまり、中小企業や業績不振企業では昇給停止・見送り条項が実際に適用されている。
  • 要点3:多くの企業で40代前後から昇給カーブが鈍化し「頭打ち」を迎えるため、定昇依存の生活設計から脱却し、人事評価基準の把握や市場価値の向上を図ることが不可欠である。

【基礎知識】定期昇給とは?ベースアップとの決定的な違いと仕組み

定期昇給(通称:定昇)とは、あらかじめ社内の就業規則や賃金規程で定められた時期に、勤続年数、年齢、あるいは人事査定の結果に応じて基本給を引き上げる制度を指します。年功序列型賃金制度を土台として発展してきた日本独自の慣行であり、「勤続年数が長くなれば仕事の習熟度が上がり、生活費も増加する」という前提に基づいて設計されてきました。

混同されがちな「ベースアップ(ベア)」との決定的な違いは、「誰の、何を引き上げるか」という点にあります。

  • 定期昇給(定昇):賃金テーブル(給与体系の枠組み)は変えず、社員個人がそのテーブル上の階段を「1段上がる」仕組み。個人の年齢や経験値の向上に対する対価。
  • ベースアップ(ベア):賃金テーブルそのものを書き換え、全社員一律、あるいは全等級の基本給を一括して底上げする仕組み。インフレ(物価上昇)対応や企業の業績好調を労働者へ還元する目的で実施。

わかりやすく言えば、エスカレーターに例えられます。定期昇給は「動かないエスカレーターを自力で一段ずつ登っていく行為」であり、上の段に行けば給与は上がりますが、ステップの位置自体は変わりません。一方、ベースアップは「エスカレーターの床面全体が上に持ち上げられる現象」であり、同じ段に立っている全員の給与が一斉に引き上がります。

定期昇給の計算方法は、企業によって大きく4つの方式に分かれます。

  • 号俸制(テーブル方式):職能資格や等級ごとに「号俸」が細かく設定されており、評価に応じて「1年に3号俸アップ(+4,500円)」のように加算される方式。公務員や伝統的な大企業に多く見られます。
  • 定額昇給方式:評価や等級にかかわらず、1年ごとに一律「月額3,000円アップ」といった固定額を加算する方式。
  • 定率昇給方式:「基本給の1.5%アップ」のように、現在の基本給に対する割合で算出する方式。基本給が高い社員ほど昇給額が大きくなる特徴があります。
  • 査定連動方式:人事評価(S・A・B・C・Dなど)のランクに応じて昇給額を大きく変動させる方式。現在は多くの民間企業がこの形式を組み合わせています。

なお、公務員の定期昇給制度は人事院勧告に基づき厳格にルール化されています。原則として毎年1月1日に勤務成績の評定に応じて号俸が引き上げられますが、民間企業の動向に合わせて昇給抑制や高齢層の号俸頭打ちが制度化されるなど、公務員の世界でも自動的な昇給は過去のものになりつつあります。

【2026年最新】昇給率平均と相場データ|春闘の賃上げ動向と企業格差

2026年から2026年にかけての力強い賃上げの流れを引き継ぎ、2026年の春闘でも労働組合側は5%以上の高水準な賃上げ要求を継続しています。しかし、報道で躍る「賃上げ率5%達成」という見出しを鵜呑みにしてはいけません。この数字には「定期昇給分(約2%)」と「ベースアップ分(約3%)」が合算されているケースが大半だからです。

厚生労働省の「賃金引上げ等の実態に関する調査」および経済団体の集計データを統合・分析すると、日本企業における昇給の内訳と実態相場は以下のようになります。

企業区分定期昇給の平均相場ベースアップ動向編集部の分析・現場の注意点大手企業(従業員1,000人以上)約1.8%〜2.2%
(月額5,500円〜7,500円前後)3.0%〜3.5%前後を実施
(合計賃上げ率5%台を維持)定昇制度が制度として確立。ただし中堅層以上では定昇幅を削り業績連動賞与へシフトする動きが顕著。中堅・中小企業(従業員100〜999人)約1.4%〜1.7%
(月額3,500円〜4,800円前後)1.5%〜2.0%前後に留まる
(合計3%台前半)原材料費やエネルギー価格の転嫁状況に左右され、ベアを見送って定昇の維持だけで手一杯の企業が多数。小規模零細企業(従業員99人以下)0%〜1.2%前後
(月額0円〜3,000円程度)見送りまたは雀の涙程度
(0%〜1%未満)そもそも就業規則に定昇の規定がない企業が半数近く存在。「昇給あり」の求人票でも実質凍結の現場が散見。国家・地方公務員(一般行政職)約1.7%〜1.9%
(標準評価で年1回昇給)人事院勧告に基づき給与法改正で改定制度の安定性は高いが、50歳台以降の昇給停止や管理職層の手当抑制など、実質的な総額抑制策が併用。

実態として、2026年時点でも「定期昇給の単体相場はおよそ月額4,000円〜6,000円(率にして約1.8%)」というのが、日本国内における一般的な水準です。手取り額の計算では、ここから所得税、住民税、社会保険料(健康保険・厚生年金・雇用保険)が約20〜25%差し引かれるため、月額5,000円の昇給があっても「手取りの実質増加額は月3,800円前後」にとどまるのが冷徹な現実です。

林 結菜
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林 結菜

エンタメ・カルチャー業界の深掘り取材を得意とし、現場のリアルな声をお伝えします。