卒業後、矢野は意外な選択をする。任天堂への入社だ。
世界的なゲーム企業で3Dデザイナーとして働くという経験は、彼のキャリアにおいて極めて重要な転機となった。ゲーム制作の現場では、キャラクターモデリング、環境デザイン、テクスチャ制作など、高度なデジタル技術が求められる。矢野はここでPhotoshopをはじめとするデジタルツールの操作を徹底的に習得した。
任天堂では厳格な品質管理とチームワークが要求される。個人の創造性と組織の目標をどう調和させるか。クライアントの要望をどう形にするか。この時期に学んだ協働の姿勢は、後にフリーランスとして多様なクライアントと仕事をする際の強固な基盤となった。
だが、矢野の心には別の夢があった。もっと自由に、もっと個人的に、自分の表現を追求したい。その思いは日に日に強くなっていった。