一青窈というアーティストを語る上で欠かせないのが、その生い立ちと家族の物語だ。台湾出身の父と日本人の母の間に生まれ、幼少期に両親との死別を経験した。エッセイストや女優として活動する実姉の一青妙とともに、自らのルーツを探し求め、表現へと昇華させてきた歴史がある。
名匠ホウ・シャオシェン監督が手掛けた映画『珈琲時光』で主演を務めた際に見せた、静謐でありながら芯の通った佇まいは、彼女自身の生き方そのものだった。家族の喪失という深い痛みを経験したからこそ、自ら築いた家庭への想いは人一倍強い。夫・山口周平という揺るぎないパートナーを得たことで、彼女の表現はより一層の包容力と深みを増している。