渡月橋の起源は古く、平安時代初期の承和年間(834〜848年)、弘法大師空海の弟子である僧・道昌が大堰川を修築した際に架橋した「法輪寺橋」が始まりとされています。当時の橋は現在よりも約100メートル上流に位置していました。
現在の優雅な名がついたのは鎌倉時代のことです。亀山上皇が、月が夜空を曇りなく渡っていく情景を眺め、「くまなき月の渡るに似る(雲のない夜空を満月が渡っていくようだ)」と詠まれた詩文に由来します。その後、応仁の乱や度重なる洪水・流失を経て、江戸時代初期の1606年、豪商・角倉了以(すみのくらりょうい)による保津川開削事業に伴い、現在の位置へと架け替えられました。
構造面にも独自の知恵が詰まっています。全長155メートル、幅11メートルの現在の橋は、1934年(昭和9年)に完成した鉄筋コンクリート造の橋桁をベースとしています。しかし、嵐山の歴史的風土を損なわないよう、欄干(手すり)部分にはヒノキ材を使用。伝統的な木造橋の優美な外観を保持しながら、近年の大型台風や桂川の増水にも耐えうる高度な土木技術の結晶となっています。
また、現代カルチャーとの結びつきも見逃せません。劇場版『名探偵コナン から紅の恋歌』の主題歌となった倉木麻衣の楽曲『渡月橋 〜君 想ふ〜』のヒット以降、国内外のポップカルチャーファンにとっての聖地としても定着。伝統美と現代エンターテインメントが共鳴する象徴的なスポットとなっています。