ネット上の掲示板やSNSで頻繁に見受けられる「100均のホワイトボードは数日で文字が消えなくなる」という悪評。この現象の背景には、製品の品質差だけでなく、ホワイトボードの筆記・消去に関わる化学的メカニズムが存在します。
オフィス向け高級ホワイトボードは、耐久性の高い「ホーロー鋼板(ガラス質を焼き付けた金属)」を採用しており、表面が非常に平滑でインクが染み込む微細孔が存在しません。一方、100円ショップの製品はコストを抑えるため、「スチール板や厚紙の上にPET(ポリエチレンテレフタレート)フィルムを熱圧着した構造」が主流です。
PETフィルムは柔軟性に優れる反面、以下の3つの要因によって急速に消去性が低下します。
- ティッシュや硬い布による摩擦傷:イレーザーを使わずにティッシュペーパーなどで乾拭きを繰り返すと、目に見えないミクロの引っかき傷が無数に発生します。
- 剥離剤(界面活性剤)の乾燥固着:専用マーカーのインクには顔料、アルコール溶剤、そして書いた文字を粉状に浮かせる「剥離剤」が含まれています。長期間書きっぱなしにすると、剥離剤の油分が抜け、顔料がPETフィルムのミクロの溝に完全に定着してしまいます。
- 皮脂や大気中の油分の付着:手でボード面に触れると皮脂が付着し、それがインクの溶剤と混ざり合って頑固な油膜を形成します。
筆者が行った現場検証では、新品の100均ボードに書いた文字を「3日放置した状態」と「30日放置した状態」で比較しました。3日程度であれば付属のイレーザーで問題なく消去できましたが、30日経過した文字は完全に固着し、専用イレーザーで擦ると黒いインクが伸びてボード全体が黒ずむ結果となりました。